RubyKaigi 2019 デザイナーの記録2:展開
前回の続き。第2回は、前回作成したテーマから展開した制作物についてのまとめ。
制作したものまとめ
公式デザイナーとして制作したものを一覧化すると以下になる。
ノベルティ
- ステッカー
- Tシャツ
- ピンバッジ
- フーディ
- 靴下
- 博多織キーケース
配布物
- スポンサーPDF
- 公式グラフィックキット
- Keynoteテンプレート
会場関連
- ネームカード
- 会場前に飾る立て看板
- スタンプラリー台紙
- スポンサーボード
- rubyists.map
- 演題
- 手持ち案内看板(1つ)
- 会場に張り出す案内(直前または当日に用意)
画像データ
- 公式パーティ画像類
- 動画の背景
- YouTubeのチャンネルアート、チャンネルアイコン
広告
- 駅広告(今回掲載するご縁があった)
このうち、いくつかピックアップして解説する。
公式グラフィックキット
公式グラフィックキットとKeynoteテンプレート(こちらは@horaotokoが作成)を公式サイト上で配布した。テーマ確定後、公式グラフィックキットは一番最初に仕上げないといけないものだった。スポンサーが、スポンサー枠の制作物でRubyKaigiの公式素材を使用しないといけないシーンが早めに来るためである。公式グラフィックキットには以下のデータが含まれている。
-
logo
- cmyk-logo.ai
- rgb-logo.ai
- white-logo.ai
-
print-background
- cmyk-object-bg-dark.ai
- cmyk-object-item.ai
-
web-background
- rgb-object-bg-dark.psd
- rgb-object-item.psd
モニター用のRGBと、印刷用のCMYKでは物理的に見え方が異なる。今回のダークテーマをそのままCMYKで出力すると、暗くなりすぎて紫加減が失われ、まったく異なった薄暗い印象を与えてしまう恐れがあった。そこで、モニターでも印刷物でも同じ印象を与えることを最優先し、印刷用のバリエーションを作成した。
RubyKaigi 2019 デザイナーの記録1:狙い・模索・決定の回でこのように書いていたが、配布したグラフィックキットでもCMYKとRGBの2種類に分けた。必ず使い分けて!というルールなどは用意せず、使用者の使いやすいほうを使ってもらえればOKというスタンスだった。
スポンサーボード・rubyists.map
RubyKaigi 2019の会場(福岡国際会議場)に、例年通りスポンサーを掲載したボードと、Rubyistたちがどこから来たのか付箋を使って書き込める「rubyists.map」を設置する。それにあたり、2019版を作成した。
スポンサーボードは、2018よりスポンサーの数が増えたこともあり、2018よりすこし大きいボードになった。スポンサーボードに挿入できるロゴは、原則としてスポンサーがフォームからアップロードしたロゴのみである。前回までのRubyKaigiで参加していたスポンサーで、そのスポンサーのベクターデータ(印刷に適した、引き伸ばしてもきれいに使えるタイプ)のロゴをこちらで所持していたとしても、その年のRubyKaigiのスポンサー登録時にラスターデータ(引き伸ばしに耐えられないタイプ)の画像しか提出していなかった場合は過去のベクターデータは使えず、今年受け取ったラスターデータを使うことしか許されない。その場合は、印刷にあたり画質が悪くなってもそれを挿入するしかないという手続き上の厳しい決まりがあった。スポンサーボードの作成後は、掲載漏れ、間違いなどが絶対にないようにチームで厳しく確認した。
また、スポンサーボードのロゴ掲載部分の背景を白にしたのは以下の理由からである。
- ロゴを配置しても正しく識別できるように(白以外の背景色によって違って見えないように)
- スポンサーのロゴ自体の使用レギュレーションがあった場合の違反にならないように
- 当日のRubyistたちが自由に書き込めるように
続いてrubyists.mapについて。スポンサーボードと同じサイズのボード。過去のデータを使い回し、今回用の装飾に差し替えた。最も気をつけないといけないことは、地図に関して一切の省略をしてはいけないこと。一般的に地図というものは、印刷サイズやシチュエーション次第で、地図が省略表現になったりデフォルメされることがある。今回、それを一切してはならないという決まりがあった。小さな島であっても、すべてキッチリ掲載しておかなければならない。その島から参加する人が付箋を貼れなくなってしまい、平等性が失われてしまうことになるからだ。
ネームカード
ネームカードは6種類に分けられる。
- ATTENDEE(Rubyist)
- COMMITTER(Rubyへ貢献しているコミッター枠のRubyist)
- SPEAKER(登壇枠のRubyist)
- STAFF
- GUEST
- EXHIBITOR
首からぶら下げるので、Tシャツやフーディ着用時にどう見えるかも視野に入れて配色した。目的は「名前を伝えること」なので名前を書けるホワイトスペースを大きめにし、種類の違いが目につくようRubyKaigi 2019のテーマの色を分解しヘッダに適用した。裏表どちらも同じ。裏返っても裏返らなくても名前がわかるようにする。二つ折りの中身は、スポンサー枠としてスポンサー側が使用する、というのが毎年のお約束の模様。
ストラップはスポンサーの方が作成してくださる手筈になっており、調和する素敵なストラップを作成していただけた。
ピンバッジ
発注先は2018のときと同じくバッジ工芸さんにした。過去の記録にあるノウハウをそのまま流用できるからだ。種類も同様に「研ぎエポ」(凹凸タイプであり、インクが多く枠との段差がないバッジの王道仕様)に。研ぎエポの場合のデータの作り方は「フチ」が必須なので、サンプルを見つつ2019のテーマを最適化する必要がある。2018のピンバッジのうちとても細かいパスで作られたピンバッジを基準にして2019のピンバッジを設計したので、「これは実現可能かわからない」という状況にならずスムーズに進めることができた。色指定はPANTON形式で求められる。Adobe Illustratorを使用しCMYKの値からPANTONの値に変換が可能。
Tシャツ・フーディ
Tシャツ・フーディに関しては「とにかく派手に!目立つことが重要である」というOrganizerからのオーダーだった。お祭りだしね。また、スタッフが目立つ必要はない(何かあったとき見つけやすい色にしないといけない、などの設計は不要)という方向性であるとの共有を受けた。Organizerによる過去の経験からの判断によるもの。
色については発注先の選択肢から選択する形式。まずは発注する色の選定から行なった。2019のテーマの色を分解し、全8種に当てはめた。
- ATTENDEE:白・オレンジ
- COMMITTER:紫・水色
- SPEAKER:赤・白
- STAFF:黒・青
一番数の多い一般Rubyist用のフーディをオレンジにしたのは、明太子っぽい=福岡っぽい色を多めにしたかったから(まあこじつけであるが)。Tシャツとフーディの色の組み合わせは悩みポイントだった。Organizerからは「組み合わせて使うことは考慮しなくていい」と言われていたが、どう考えてもRubyistたちはもらったRubyグッズを喜んで使用するとしか思えなかった。なので極力、組み合わせたとしてもおかしくならない配色を狙った(当日の話になるが、やはり思ったとおりほとんどのRubyistがRubyKaigiの二日目以降で組み合わせて着ていた)。また、前述のネームカードを首から下げても色が揃うように配色した。
RubyKaigi 2019のロゴなどの色以外の装飾に関しては、装飾可能な領域を確認し、案を提示し、MTGで話し合い、FIXさせた。数量などについてはすべてOrganizerが担当してくださった。
すべて終えた後、大量生産に入る前にサンプルが送られてくるので、印刷位置などを確認し、発注先へ伝え最終決定させる。送られてきたサンプルは制作者特権でいただけた。RubyKaigi 2019では、Local OrganizerとDesignersの福岡チームで8着を山分けした。
駅のエスカレーター広告
世界中から飛行機に乗って集まってくるRubyistたちの会場までの交通手段は、「空港から地下鉄を使って博多へ」というルートが最も多いだろう予想されていた。なんとご縁があり、その地下鉄にRubyKaigi公式の広告も出せることになった(スポンサーの駅広告とはまた別の広告)。
Local Organizerのみなさんのおかげで、福岡空港に降り立ってすぐにRubyKaigiに出会える仕掛けを施すことができた。
前回のこの話のことである。エスカレーターに乗っているときに目にする広告で、2〜3種類を掲載することができたため、2019では3つの広告を順番に通しで見ることを前提としたストーリー仕立てに仕上げた。
駅広告では交通局の審査があるため、案をPDF出力して審査担当へ送った。本当はかなり前の段階で審査、掲載手続きというのが普通だったそうだが、この駅広告を出せることになったのがイベントの何週か前だったためかなりタイトなスケジュールとなった。ここは日本なので、一般の人が目にしたときに「何の広告だろう?」とならないよう、何かしらの日本語が入っていなければ審査は通過できないという制約もあり心配だったが、結果としては問題なく通過できた。
スポンサーや登壇者による展開等
このほかにも、会場で配られたノベルティや公式サイトのイベントページにていろいろな姿を見ることができ、テーマの制作者としては嬉しい限りだった。ありがとうございます。めちゃ楽しかったです。
次の記事
次回はRubyKaigi 2019当日について。どういう結果になったのかをまとめる。